鳥取県倉吉市の南に湯煙を上げる関金は、古名を「白金湯」といい、山陰の歴史薫る名湯である。近くのイワツツジの名所として知られる亀井公園は戦国時代の亀山城跡で、ここからの雪抱いた大山や蒜山の眺めには心洗われる。江戸時代には倉吉から犬挟峠越えで勝山に抜ける美作往来の宿場町として栄え、温泉があったことから「湯関宿」とよばれた。無色透明、無味無臭の美しい湯は、世界でも有数のラジウム含有量を誇る、極めて良質の療養泉である。
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開湯の歴史はすこぶる古い。『日本鉱泉誌』には平安初期の延暦年間(七八二〜八〇六年)と書かれているが、奈良時代の天平勝宝八(七五六)年開基といわれる大滝山地蔵院の創建と同時代にまでさかのぼるようだ。ちなみに地蔵院には、国の重要文化財に指定されている木造地蔵菩薩半肖像が安置されている。矢送川沿いの山裾、狭い坂道の両側に民家が軒を連ね、奥に四、五軒の温泉宿がたたずむ。その一角に昔ながらの共同浴場「関乃湯」があった。こぢんまりしているが、明治時代から続く庶民の外湯だ。浴場はタイルだが、湯船は松造り。深めの湯船の縁から、白金の湯にふさわしい透明な湯が静かにこぼれていた。やわらかな単純放射能泉は湯元で四五・七度。水一滴加えていない源泉そのままの湯は「湯関宿」として栄えた当時のままのものだろう。いかにも人のいい管理人のおじさんは、「いつまでも伝統の温泉を守っていきたいね」とか強い。「上がり湯がない、と文句を言うお客さんもいます。でもシャワーは必要ないのです。肌から温泉の成分がしみこむので、洗い流さない方がいいのです」と語るのは、昭和七(一九三二)年創業の「温清楼」の女将さん。週に一、二回しかお湯を取り換えない循環風呂とは訳が違う。湧き立ての新鮮な湯が常に湯船からあふれ出ているのである。「お湯があふれていてもったいない、というお客さんもいます。でも、これが本来の温泉の姿です」温清楼の露天風呂は「日本の温泉」の極みを思わせる。アスナロ造りの湯船が二つ。底に青竹が敷かれ、縁に檜材があしらわれていた。やはりここも源泉一〇〇%である。この極上湯に浸りながら、粋な日本庭園の風景の一部になるためにだけでも、はるばる山陰に足を運ぶ価値はありそうだ。